旋盤って?7種類の旋盤の特徴を徹底解説◆加工の流れから注意点、メリットデメリットまで

  • 「旋盤加工にあたって安全意識を高めたい
  • 「そもそも旋盤ってどんなタイプがある?」

旋盤についてこのように考えた経験、ありませんか?

そこで今回は

  • 旋盤についての基礎知識
  • 旋盤の種類
  • 個人で旋盤を使う方法
  • 旋盤加工での事故を防ぐには

といったように旋盤について詳しくご紹介!

この記事を読めば旋盤の基本的な知識が身につきます。

旋盤とは?

旋盤とは素材を加工する工作機械のことです。
加工したい素材を回転させて刃物を当てることにより、円筒形状に削り出す機械のことを言います。 筒状のワークの加工に適しているのが特徴となります。

旋盤ってどこで使われてる?


旋盤自体は日常生活の中で見かけることはありません。

ですが身近にあるほとんどの機械製品には旋盤加工された部品が使われています。

  • 家電
  • 建設機械
  • 自動車
  • 医療機器

といったように様々です。

素材についても

  • アルミ
  • 樹脂

あらゆる加工ができます。

旋盤で使用する3つのバイト


バイトとは旋盤の刃の部分のことです。
シャンク(柄)とチップ(刃)で構成され、材料を削ることに使われます。

ここでは代表的なバイトのうち3種類を紹介します。

1、スローアウェイバイト

シャンクとチップが別々になっているバイトです。
チップを交換することができるようになっているので、チップを研磨しなくていいのがメリットとなります。
低コストで使いやすいことから広く使われています。

2、ムクバイト

シャンクとチップが一体化しているバイトです。

チップがダメになっても研磨することで使い続けることができます。

使う時にはチップを成形する必要がありますがその分好きな形状にすることができます。

3、付刃バイト(ロウ付けバイト)

シャンクにチップをロウ付けしたバイトのことです。 ムクバイトと同じく、使う時には刃先の成形が必要となります。

旋盤にはどんな種類がある?


旋盤といっても数多くの種類があります。ここではメジャーな旋盤7種類について紹介していきます。

1、汎用旋盤



基本的な構造の旋盤です。
旋盤といえば汎用旋盤のことを指すケースが多くあります。

  • 主軸台
  • 心押し台
  • 往復台
  • 送り装置
  • ベッド(旋盤の土台部分)

といった構造です。

<加工の流れ>

1.主軸台で材料を固定して回転
2.往復台にセットしたバイトを押し当てて削る

<メリット>

  • 補助工具の組み合わせで様々な加工が行える
  • 作業中の急な変更や修正に対応できる

汎用旋盤には手動ならではのメリットがあります。

<デメリット>

  • バイトを動かすのは手動のため加工時間が長くなる
  • 経験や技術でクオリティに差が出やすい

試作品やオーダーメイド部品などの少量生産に向いています。

2、NC旋盤


NC旋盤のNCとはNumerical Control(数値制御)のことです。 自動で加工する旋盤になります。

<加工の流れ>

1.縦、横、高さの座標を設定
2.数値をプログラミングして加工といったもの。

そのため同一部品の大量生産によく使われています。

<メリット>

  • 作業者の練度でクオリティに差が出ない
  • 効率良く安定して加工できる

といったメリットがあります。

<デメリット>
あらかじめ作業手順をプログラミングするので

  • 少数ロットの生産には向いていない
  • 途中での修正や追加工には向いていない

等のデメリットがあります。

3、卓上旋盤


卓上旋盤は名前の通り、汎用旋盤を卓上サイズにまで小さくしたものです。

<加工の流れ>
基本的には汎用旋盤と同じです。

ただ小さな部品を連続で加工することに適しています。

<メリット>
メリットとしては価格が安いこと。
安い旋盤はほとんどが卓上タイプなので個人で旋盤を使いたい場合は必然的に卓上旋盤となります。

<デメリット>
本体が小さいので加工材料も小さいものに限られてしまうのがデメリットです。

4、そのほかの旋盤

そのほかの旋盤には以下のようなものがあります。

正面旋盤

正面削りがメインの旋盤。
普通旋盤に比べて大きいものを加工することができる。
メリット

  • 切りくずが下方向に落ちるため製品に傷がつきにくい
  • 連続加工に向いている

デメリット

  • 精度の高い加工には向いていない
立旋盤

縦方向に材料を固定することで

  • 長く重たいもの
  • アンバランスいびつな形状のもの

を安定して加工。
長く重たいものを横向き固定で加工したときの

  • 重力によるたわみで芯がズレる
  • 重量バランスがとれなくなり均一な加工が難しい

などのデメリットを回避できる。

タレット旋盤

タレットという旋回式の刃物台がついている旋盤。

複数の工具を刃物台に取り付けることができる。
工程が多岐にわたっていても

  • 工具を取り替える手間を省ける
  • 効率よく作業を進めることができる

そのため部品の大量生産に向いている。

複合加工旋盤

NC旋盤の機能をより高めた旋盤。
刃物台に

  • エンドミル
  • ドリル

などの工具までつけることができる。

そのため穴あけ中ぐり加工まで可能。
この旋盤1台で多くの種類の加工ができる。

  • 加工物の取り付け取り外しの手間がかからない
  • 工具の固定にかかる工数が減る

といったことから効率良く加工が可能。

旋盤って個人でも使える?


ここでは旋盤を個人で使う方法について紹介していきます。

方法1:個人で旋盤を買う


個人で旋盤を買うなら卓上サイズ一択です。 参考までに中古旋盤の相場としては

  • 普通旋盤だと数十万円
  • NC旋盤になると数百万円

となります。

旋盤自体も大きいので個人で買うにはスペース的にも厳しいものが。

卓上旋盤であれば新品でも数万円から購入できます。

方法2:旋盤をレンタルする


旋盤をレンタルするという選択肢もあります。
ただ工作機械のレンタルができるところでも旋盤をレンタルしてくれるところは少ないです。

理由としては

  • 旋盤自体が数十万~数百万円と高価
  • 1回の操作ミスで壊れることもあり修理代も高くなってしまう
  • 死亡事故もありうるためレンタルして何かあったら責任が取れない

といったもの。

仮にレンタルできても卓上旋盤しかレンタルできないことも考えられます。

方法3:工場に持ち込みする


旋盤加工の工場に持ち込むという方法もあります。
ただこの方法は

  • オーダーメイドのため料金が高くなる
  • 工場の設備によっては加工できない素材がある

といったこともあるので事前の確認が必要です。

旋盤で注意しないといけない2つのこと


旋盤加工中の死傷事故は毎年報告されています。
事故を防ぐための注意点についても紹介していきます。

正しい姿勢や立ち位置で旋盤加工を行う


指や顔が接触したり、切りくずが飛んでくるなどしてケガをしてしまうことがあります。
そのため

  • 不用意に顔を近づけない
  • 切りくずが飛んでこない位置で作業をする

といったことに注意が必要です。

作業時の服装に気をつける


飛んでくる切りくずでのケガを防ぐために作業時には

  • 長そで
  • 長ズボン
  • 保護メガネ

は必須。

またその際に

  • そで口や上着のすそが巻き込まれないようにする
  • 加工時の軍手は厳禁

といった注意も必要です。

事故を防ぐには旋盤ロボット


旋盤加工での事故を防ぐために旋盤ロボットを導入して自動化するという方法もあります。
旋盤ロボットとは協働ロボットの一種です。

メリットとしては

  • 人手不足の解消
  • 現場作業員の負担の軽減
  • 深夜でも機械を動かすことができるため生産性が向上する

といったものがあります。

反対にデメリットとしては

  • ロボット本体だけでなく初期設定の手間などのコストが高くなってしまう
  • 24時間稼働させるため維持管理に通常以上の費用がかかる

となっています。
協働ロボットについて詳しくは こちらの記事 で解説しています。 ぜひご確認ください。

作業の負担を減らすには


旋盤ロボットをはじめとした協働ロボットは導入にあたって安くはないコストがかかってしまいます。

「ロボットを導入するほどお金をかけられない
「現場のオペレーションを変えたくない」

そんな時は

  • 荷役助力装置
  • 切粉破砕機

も検討してみてはいかがでしょうか。

荷役助力装置のメリット

協働ロボット比較して

  • 導入コストが抑えられる
  • 作業工程が大きく変わらない

といったメリットがあります。

遠藤工業ではいろいろなタイプの荷役助力装置を販売しています。

切粉破砕機のメリット


旋盤加工で排出されるのが切削屑(切粉)
基本的に長くつながったカール状となります。
長くカールしたままの切粉を扱おうとすると

  • 詰まりやすい
  • 体積が大きく、受け皿がすぐ満杯になる
  • 体積が大きく、保管や輸送時にかさばる
  • 遠心脱油時のトラブルにつながる

などデメリットが多くあります。

切粉破砕機で切粉を細かくすることで、これらのデメリットが軽減されるという導入効果が見込まれます。

【注意】切粉破砕機導入の前に

旋盤と同じ金属の切削加工に、フライス加工があります。
ですが一般的にフライス加工の切削屑はつながらず、パラパラとしたものになります。
そのため切粉破砕機を導入してもあまり効果は見込めません

まとめ


いかがでしたでしょうか?

今回は

  • 旋盤についての基礎知識
  • 旋盤の種類
  • 個人で旋盤を使う方法
  • 旋盤加工での事故を防ぐには

について紹介してきました。

旋盤加工された部品はかなり身近で使われていますが、毎年痛ましい死亡事故が報告されています。

安全に気をつけて事故の無い旋盤加工ができることを祈っております。